医療・福祉の現場では、看護師、医師、理学療法士、ソーシャルワーカー、介護職など、さまざまな職種が協力し合い、クライエントのために最良のケアを提供することが求められます。そのためには、多職種連携会議やミーティングで、各専門家の知見や意見を効果的に取りまとめ、実行可能なプランに落とし込むことが非常に重要です。
しかし、ファシリテーターとして会議を進行する際、「自分にその役割が務まるだろうか?」と自信を持てない方も少なくありません。実際、多様な専門職の意見が交わされる中で、対立が生じたり、話が脱線したりして、結論を出すことが難しく感じることもあるでしょう。今回は、ファシリテーターのスキルに自信がない方に向けて、クライエントの利益を最優先にしながら、さまざまな立場や意見を結集するための具体的なファシリテーションのコツを紹介します。
多職種連携の会議は、さまざまな専門性を持った参加者が集まるため、意見や視点が多岐にわたります。ファシリテーターとしては、これらの意見をバランスよく引き出し、まとめることが求められますが、いくつかの要因によって難しさが生じます。
異なる職種が参加する会議では、それぞれの職種で使用される専門用語や視点が異なります。医師は治療面から、看護師は日常的なケアから、リハビリスタッフは身体機能の回復を中心に意見を出しますが、こうした視点の違いが会議の中で混乱を招き、スムーズなコミュニケーションが難しくなることがあります。
医療や福祉の現場では、クライエントのケアに関する意見が対立することもあります。例えば、治療優先か生活支援優先かというように、職種ごとの役割や視点によって意見が食い違う場合があります。ファシリテーターとしては、こうした対立する意見をどう収め、クライエントにとって最善の解決策を導き出すかが課題となります。
多忙な現場では、会議の時間が限られています。そのため、参加者が多いと話が脱線してしまい、結論にたどり着かないまま時間が過ぎてしまうことがあります。特に、重要な議題を議論する時間が十分に確保されず、会議が不完全燃焼で終わることはよくある問題です。
ファシリテーションのスキルに自信がないと感じる方でも、以下のポイントを押さえることで、質の高い多職種連携会議を運営することができます。特に、クライエントの利益を最優先にしながら、多様な立場の意見を効果的にまとめるためには、準備と進行の両方が重要です。
会議の目的を最初に共有することが大切です。
会議の冒頭で、「この会議の目的は何か?」「最終的にどんな結論を出すべきか?」を明確にします。クライエントに対するケアの方針を決定する場であることを全員が理解していれば、それぞれの職種がどう貢献できるかを考えるようになり、意見のまとまりが生まれやすくなります。
また、具体的なアジェンダを事前に作成して共有し、それに基づいて会議を進行することも重要です。アジェンダには、各議題に対して必要な時間を割り振り、無駄のない議論を促進します。